
(写真左から、大沼様、林様、平山様)
株式会社集英社ゲームズ
https://shueisha-games.com/
【業種】情報通信業
【事業内容】コンシューマー、PC、スマートフォンでのデジタルゲームの企画・開発・販売およびアナログゲームの企画・開発・販売 【当社導入サービス】デバッグ/翻訳(日本語→英語)/LQA 【ご出席いただいた方】 ・開発プロデュース本部 開発2部 林チーム シニアプロデューサー 林 真理 様 ・開発プロデュース本部 リリースマネージメントチーム QAスペシャリスト 大沼 得生 様 ・開発プロデュース本部 リリースマネージメントチーム ローカライズ 平山 瑞貴 様 (取材:2026年8月/公開:2026年10月)
小規模開発とグローバル展開を後押しする、
信頼感の高いパートナーを探して
――始めに、御社の事業内容をお聞かせください。
林様:集英社ゲームズは、集英社の子会社として設立され、今年で5年目になる若い会社です。ゲームにおける作品性や作家性が注目されるようになってきた時代に合わせて、集英社グループがこれまで培ってきた小説家や漫画家を育てるノウハウを活かし、ゲームクリエイターを育成することを目的として設立されました。また、発掘した原石を磨いて世界へ作品を届けるミッションにも挑戦しています。これまでに、個人や小規模チームのプロジェクトから100人体制のAAタイトルまで、10作程度のデジタルゲームをリリースしたほか、ボードゲームの制作も行なってきました。
――弊社のサービスをご利用いただいた『シュレディンガーズ・コール』は、どのようなゲームでしょうか?
林様:いわゆるテキストアドベンチャーゲームで、世界が消滅する刹那の時間に、主人公の少女メアリが生と死の狭間でさまよう人たちと電話で会話し、彼らの心残りに寄り添って魂を救済していく……という物語です。
もともとは、弊社立ち上げのきっかけとなった「集英社ゲームクリエイターズCAMP」というクリエイター支援プロジェクトで大賞を受賞した作品で、3人の開発チームで制作を進めてきた小規模開発作品(インディーズゲーム)になります。弊社で最初に制作が始まり、しかもゲーム開発経験があるのはチームメンバー3人のうち1人だけという、まさにゼロから出発した作品でした。


『シュレディンガーズ・コール』 ・ジャンル:絵本を読んでいるかのように、優しさに包まれる感覚のノベルアドベンチャー ・プラットフォーム:Nintendo Switch/Steam ・対応言語:日本語/英語/中国語(繁体字)/中国語(簡体字) ・開発:Acrobatic Chirimenjako(アクロバティックチリメンジャコ)
・公式サイト: https://shueisha-games.com/games/schrodingers-call/
© Acrobatic Chirimenjako / SHUEISHA, SHUEISHA GAMES――本作の開発にあたって、事前にどのような課題や懸念事項を抱えていましたか?
林様:これまでプロとして活動してきた開発チームではないので、プログラムのデータ構造などが一般的な開発会社さんとは異なった形式になる可能性が高く、そのことがデバッグ作業に悪影響を及ぼす懸念を当初から感じていました。たとえば、不具合が見つかっても、プログラム構造の都合で修正できないとか、修正するためには大幅に作り直す必要がある、といった事態が起こるかもしれません。また、当初からワールドワイドでの展開も想定していたのですが、特にアドベンチャーゲームは日本語からのローカライズがしっかり行なわれないと遊べないジャンルなので、翻訳やLQA(言語品質保証)の質の向上も課題だと認識していました。
――今回デジタルハーツを選んでいただいた決め手は何でしょうか?
林様:弊社にはゲーム業界歴の長い者が多く、私自身も30年ほどゲーム制作に携わってきましたので、御社には以前から大変お世話になっています。そういった過去の実績と信頼を踏まえて、経験の浅い小さな開発チームを周辺からしっかりサポートするためにも、開発体制に寄り添って安定した支援を期待できるデジタルハーツさんが最適だと判断しました。
大沼様:本作は複数のプラットフォームでのリリースを予定していましたが、プラットフォームごとに異なるガイドライン審査への対応実績も豊富にお持ちでしたので、御社なら安心してお任せできると確信していました。また、光の明滅や画面の切り替えなどによる演出が多く含まれており、光過敏性発作に関するテストが必要だと感じていて、それに対応可能な数少ない会社だった点も決め手の一つです。
平山様:ローカライズに関しては、最初に英語への翻訳作業をお願いしたのち、「開発チームを支援するために、LQAについてもフレキシブルに動ける会社に頼みたい」と考えたときに、最初に候補に挙がったのがデジタルハーツさんでした。英訳とLQAを並行して進められるのも大きなメリットだと感じて、御社に追加でご依頼する運びとなったんです。
作品性を損なわず、想定外の事態にも対応する柔軟なデバッグ支援
――弊社のサービスを導入して、デバッグに関する課題はどのように解消されましたか?
大沼様:ゲーム作りにおいて弊社が最も重視しているのが、独自の面白さやアイデアといった作品性です。もし、すべてのタイトルでQA(品質保証)やQC(品質管理)に一律のルールを採り入れると、作品性が画一化される恐れがありますから、それぞれの世界観や開発体制に寄り添った対応を常に心がけています。しかし、コストや時間などの制限がどうしてもあるので、そのバランスをどうやって取るかが大きな課題でした。デジタルハーツさんには、経験が少なくて規模も小さい開発チームという事情を汲み取ったうえで、作品性とコスト性を両立させる提案と運営に取り組んでいただけたと実感しています。
具体的な対策例としては、事前に開発エンジニアにヒアリングを行ない、どの部分に技術的な懸念があり、どんなアプローチが必要なのかを洗い出しました。その情報を基に該当箇所を重点的にテストすることで、実際に不具合の検知につながっています。
林様:通常のテキストアドベンチャーだと、「こんな場面はこういう手法でデータを作成する」というフォーマットに沿って制作していきますが、本作は全体を通して手作業で細かく作り込んでいったため、似たシーンでもムービーだったりリアルタイム描画だったりと作り方の差が結構あるんです。同様に、以前と同じ場面に見えるけれど、実は照明の当たり具合が微妙に違う、といったシーンもあります。こういった意図的な細かい差が混在する状態のものをチェックするのは難しいだろうから、デバッグ作業は難航するかもしれないとの懸念もあったのですが、デジタルハーツさんのスキルによってうまく乗り越えられた印象です。現場のテスターの方々は、正しい演出なのか意図しない不具合なのか、判断に悩むことも多かったと思いますが、きちんと報告していただいたおかげで開発側へのチェックも確実に行なえて、大変助かりました。
――今回のデバッグ作業において、最も印象に残っていることはありますか?
大沼様:当初の計画になかったチェックにも応じていただいたのが印象的でした。制作がある程度進んだ時点で、開発チームから「サウンドの演出などを調整したので、不具合がないか検証してほしい」との要望が急に届いたんです。想定外の作業なので、コストや作業時間が追加で発生しかねない状況でしたが、作品性を高めるためには必要な作業だということで、他のチェック事項と同時に確認する体制を御社内で構築していただき、通常の半分程度の工数に圧縮しつつデバッグもしっかりと行なえました。
作品を面白くするためならば、やれる範囲のことはすべてやるべきですが、コストやスケジュールは守らなければいけません。そういった意味では、デジタルハーツさんの現場の方々と検証作業の優先度を相談し、「品質向上のためにも、これは必ずやる」「これは現段階ではリスクが高いから見送った方がいい」といった率直な意見をいただけて、とても頼もしく感じました。
世界観をそのまま海外へ届ける、徹底したローカライズ品質の追求
――翻訳に関しては、弊社のサービスでどのような課題が解消されましたか?
平山様:今回のプロジェクトは、弊社としては初めて、翻訳からLQAまでのローカライズ工程を1人の専任者が一貫して監修する体制でした。そのため、社内の方針が固まりきっていないなかで、どのように品質を守りながら実作業を進めていくか、という課題が存在していたんです。さらに本作は、日本語から他の言語へ翻訳する際に、文章を配置するレイアウトの調整や独自の用語の訳し方などが非常に難しく、開発チームが表現したい世界観を損なわずにローカライズできるかどうかが最大の懸念事項でした。
そこで、御社に英訳を依頼する最初の段階で、ゲーム内の第1章のテキストを丸ごと訳していただき、こちらで監修してフィードバックすることを何度か繰り返して、「この用語はこう訳す」「この表現は使わないようにする」といった綿密なすり合わせを実施したんです。そのおかげで、以降は非常にスムーズに作業が進み、日本語で構築された世界観を英語でも変わらずに表現したうえで、納期の一部短縮まで達成できました。
林様:本作の文章は詩的な要素が強く、直訳に近くなればなるほど世界観が伝わりづらくなってしまうため、どれだけ丁寧に翻訳できるかが鍵になると思っていましたが、発売後に海外のお客様から「感動した」という感想を多数いただき、「感動するところまでローカライズでお届けできたんだ」と安堵しました。テキストアドベンチャーは文章の完成度が重要で、海外の方が遊んだときにゲーム体験の邪魔になるような翻訳だと高い評価は得られませんので、御社のお力をいただいたことが海外展開の大きな後押しになったと認識しています。
――弊社のLQAサービスによって解消された課題はありましたか?
平山様:LQAについても、開発チームの規模を踏まえて、不測の事態への対策が課題でした。実際に、当初はテキスト量が25万字程度の見込みでしたが、開発初期段階で5万字近く増え、ローカライズ作業の予定に支障が生じてしまったんです。しかし、文字数増加で工数がどれだけ増えるのか、それを抑えるにはどんな対処が必要か、といった緻密な検証をしていただいたおかげで、工数増加は最低限に抑えられ、品質を確保しつつスケジュール通りに作業を終えられました。5万字も増えたのに納期にほとんど影響しなかったケースは、過去に経験したことがありません。
さらに、今回のローカライズで最も苦労したのが、主人公が情報やイラストを書き込む手帳です。これは開発スタッフが描いたPDFの画像をそのまま実装しているのですが、翻訳によって世界観が崩れないように、文章の改行位置や文字の大きさなどを慎重に調整する必要がありました。たとえば、日本語を英語に訳すと文字数が長くなりやすく、そのまま反映すると文章がページを大幅にまたいだり文字が小さくなったりして違和感があるので、日本語とは異なる位置で改行しないといけません。それによって文章のニュアンスが変わらないよう、開発の最終盤まで何度も調整していただきました。


――今回のローカライズ工程において、最も印象的だったことは何でしょうか?
平山様:とても密にコミュニケーションを取れていたことです。特に、最初に第1章を丸ごと翻訳していた時期は、方向性を定めるために毎日のように打ち合わせを行ないました。こちらからのフィードバックに対しても、そのまま反映するのではなく、指摘の意図を汲み取ったうえで新たなアイデアを提案してくださることが何度もあり、本作の世界観を十分に理解した状態で作業を進めていただけたと思っています。その後も週一で定例ミーティングを実施し、作業の進捗や懸念点などを常に報告していただいたおかげで、トラブルが発生しそうな状況でもすぐに対策を取って事前に回避でき、大変助かりました。
デバッグとローカライズの連携が開発効率を高めて品質向上にもつながる
――デバッグとローカライズを同時にご依頼いただいたことで、どんなメリットを感じられましたか?
大沼様:通常だと、デバッグはゲームの挙動全般、LQAはテキスト周りというようにチェックする領域が分かれているため、どちらの不具合なのか判断つかずに報告が宙ぶらりんになることがよくあります。しかし、今回は両方を並行して進めていただき、お互いの部署が連携して情報共有が徹底されたおかげで、不具合の報告漏れが抑えられたり作業状況の確認がスムーズに行なえたりできました。これは、開発を順調に進められた理由の一つだと捉えています。
平山様:具体例として、今回のプロジェクトではタスク管理ツールのRedmineを利用していましたが、デバッグ作業中に翻訳によるレイアウトのミスが見つかったときにはLQA側でチケットを起票し、逆にLQA側で発見した不具合はデバッグ側で起票するといった連携が取られていました。
――御社と同じような課題を抱えている企業に向けて、デジタルハーツのサービスについてアドバイスがあればお聞かせください。
大沼様:お客様に楽しく遊んでもらうためにも、ゲームの規模に関わらず一定品質のQAを行なうことが我々の目標ですが、デジタルハーツさんはその想いをしっかりと受け止めて、作品を大事にしながら作業にあたっていた印象でした。開発スタッフのリソースは作品作りに振り分けて、デバッグやローカライズの労力はデジタルハーツさんにお任せするのがとても有効だと、今回のプロジェクトを通じて改めて実感しています。小人数のチームや個人で開発を行なっている方々も、一度相談してみてほしいです。
平山様:本作のローカライズ作業については、開発チームも含めて強くこだわった箇所が多かったのですが、デジタルハーツさんにはしっかりと向き合ってもらえて、こちらの期待を上回るものを提示していただきました。こだわりたい部分があればあるほど、デジタルハーツさんは柔軟に対応していただけると思うので、我々と同じ悩みを持つパブリッシャーさんに是非お勧めします。
林様:開発チームの経験が浅かったり小規模だったりすると、想定外の事案がデバッグのタイミングで起こることが多々ありますが、そういった障壁を乗り越えるにはデジタルハーツさんのように豊富な知見を持つ会社にお願いするのが安心です。特に、最終的なアウトプットまで安定した品質を期待できる点は、他社にはないメリットだと感じました。
実は今回のプロジェクトは、ゲーム制作に慣れていない開発チームだったこともあり、私の頭の中には「見込みよりも1~2ヵ月延びるかもしれない」との懸念もあったんです。ところが、御社にご協力いただいたおかげで、大きな問題もなくスムーズに制作が進み、当初の予定通りに終えることができました。しっかりとしたサポート体制でゲームクリエイターを支えたい、安定した品質の作品を発売日にお客様へ届けたい、という企業さんにとって、デジタルハーツさんは最適な選択肢だと思います。

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